2010年07月03日

篆書について1(小篆と印篆)

このブログの中でも印篆とか小篆、さらには小篆風印篆なんて出てきて、おそらくお客様からすると、訳が分からないのではないかと思いまして、篆書について少し詳しく書いてみようと思います。
ご同業もたくさん見ているみたいなので、もし今までハンコを勉強する機会を得られなかったご同業にも少し知識の足しにしてくれたらな、という思いもあります。ですので、一般のお客様には少し専門的になりすぎることもあるかと思いますが、ご容赦くださいませ。

篆書の解釈は色々あると思いますが、紀元前の中国、秦の時代に作られた小篆という書体と、そこから派生する書体(印篆など)、場合によっては小篆以前の書体(大篆など)を含めた、書体の総称のことです。ですが、話を広げるとややこしくなるので、主に実用印に使われる小篆と印篆に限定させていただきます。

小篆とは、秦の時代に作られた書体で、のちにそれを体系化してまとめた「設文解字」という最古の字書がありますので、我々が参考にするおおもとの字は「説文解字」の字ということになります。

ウィキペディア説文解字

ウィキペディアの画像にもありますが、例えば「中」の小篆はこういう字です。

「中」小篆

小篆は縦長の字形でそのままではハンコに収めにくいため、ハンコ用に小篆の字画を増減し四角くしたのが、印篆です。
篆刻字林から抜粋すると「中」の印篆はこんな感じです。

中」印篆

ハンコで小篆と印篆の違いは、お札の表と裏に捺されている印影を使って説明されていました。一万円札でも千円札でも構いません。ご覧下さい。
表に「総裁之印」 という印影が印刷されています。直線的でほぼ真四角な字、これが印篆です。
裏は1、2、1字という配字で「発券局長」です。 曲線的で縦長な感じ。これが小篆です。
これは簡単で正しい説明だと思いますが、少し小篆のイメージが違うと思いませんか? 今はもっと線の強弱をつけた感じが小篆のイメージです。

実は今「小篆風印篆」という表現が席巻していて、これが小篆のイメージとなっているのです。
例えば今までここで彫った中では下の印影が小篆風印篆にあたります。四角い印篆の字形を使いながら、線の強弱を付けています。

長島圭一郎(小篆風)公輔(小篆)譲次(小篆)

競技会ではこの彫り方が主流となっていますが、競技会の規定でもただ「篆書」となっていて、ちゃんと名前が付いているわけではありません。書体というよりは四角い印篆を小篆風に見せる表現方法と言ったほうがいいかもしれません。
本来小篆か印篆かは線質の表現方法ではなく、字形のことですが、小篆風印篆という表現が登場して以来、強弱をつけない線質表現を印篆、筆っぽい強弱をつけた表現を小篆と呼ぶようになっています。
これに習うと「発券局長」の印は線の強弱はないので、印篆風小篆ということになるでしょうか。いや、そうすると、小篆そのものである説文解字も印篆風ということに・・・。すみません、この一文は忘れてください。笑

説文解字の字形に忠実なら間違いなく小篆ですが、明確な線引きは難しいものも多いので、いつもどう表記するか迷います。
余計分からなくさせてしまったでしょうか・・・


posted by 上野雄一 at 19:31| Comment(0) | TrackBack(0) | はんこの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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